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27.期末試験

「そういえば、そろそろ試験だね」

昼食時、レイがふと思い出したように口を開く。

「試験?」

「もう入学して一年経つし、進級のための試験があるって通知はあったと思うけど?」

「そうだったか?」

「まあ、イアンなら実技は余裕だろうけど、座学もあるからね。赤点を取れば、進級できないって噂だよ」

「マジか、冗談だろ?」

イアンは眉間にしわを寄せ、頭を掻く。

戦闘能力では学年一を争うイアンであるが、勉強はあまり好きではない。

入学試験の時はというと、一夜漬けで何とか頭に詰め込んだくらいだ。

イアンにとって今回の試験は座学が大きな壁となることは確実だろう。

「とにかく、勉強はしないといけないよ?」

「あー、面倒くせぇ…」

「わたくしのライバルとあろう者が、とんだ醜態ですわね」

呆れたような声にイアンが目を向けると、セシリアがイアンを見下ろしていた。

「なあ、俺とお前はライバルだったのか?」

「少なくとも、わたくしはそう思っていますわ。相席してよろしいですか?」

「ああ、もちろん。オルガ嬢もどうぞ」

レイは空いていた隣の椅子を引き、オルガを迎え入れる。

一方で、イアンはセシリアを放っといて食事を続けていた。

セシリアはイアンをじっと見て、眉をひそめる。

「貴方にはレディーのために椅子を引こうという気はないのですか?」

「ない」

「まったく、貴方という人は…」

セシリアはため息をつき、自分で椅子を引いてイアンの隣に座った。

「それで、試験の話でしたか?」

「そうだよ。イアンの座学をどうにかしないとって話してたんだ」

「それ程酷いのですか?」

「まあね…イアン、現国王陛下のお名前は?」

「サリアス・アレイサンバー」

「サイラス・アレクサンダー陛下ね。じゃあ、サイラス陛下は何代目?」

「それは分かるぞ。六代目だろ?」

「七代目だよ…」

「そうだったか?」

「とまあ、こんな感じかな」

「冗談ですわよね…?」

セシリアは絶句した。

まさか国王の名前も知らない国民がいると思ってもみなかったのだ。

「仕方ないだろ。興味ないことまで覚える気になれないんだよ」

実際、イアンは座学の講義ではほとんど寝ている。

一方で、戦闘や魔法に関連する内容の時はバッチリ起きて聞いているという極端なものだった。

「これは本気で何とかしなければならないようですわね…」

セシリアは口元に手を当てて考え込み始める。

イアンが食事を終えた頃、ようやくセシリアは口を開いた。

「決めました。わたくしが教えて差し上げますわ。貴方を留年させるわけにはいきません」

「そういうことなら、僕も協力するよ。オルガ嬢にもお願いしていいかい?」

レイの問いかけにオルガは頷く。

「おい、お前ら…」

「イアンは黙っていてもらえるかい?科目の分担はどうしようか?」

「そうですね…では、わたくしは歴史と言語を担当しましょう」

「じゃあ、僕は…」

当事者のイアンを置き去りにして、次々と物事が決まっていく。

「あとは算術かな。だけど、僕も算術は教えられる程に得意じゃないんだよね」

「実はわたくしとオルガさんもですわ。誰か適任者がいるといいのですが…」

二人は腕を組んで頭を悩ませる。

「それで、その時スピルナが…」

「相変わらずクレアは馬が好きね」

傍を通る声に、レイは何か閃いたのか笑みを浮かべた。

「リンダ嬢、ちょっといいかな?」




試験の終わった一週間後。

レイたち講師陣がイアンの元に集まっていた。

「それじゃあ、イアン。結果を見せてくれるかい?」

全員が息を呑んで、イアンの答案が差し出されるのを待つ。

その緊張感が煩わしく思い、イアンはさっさと答案を机に並べた。

「え?この点数って…?」

「嘘ですわよね?」

「これ、本当に貴方の答案?」

「まさかとは思うけど…カンニング?」

それぞれが口々に疑念の声を上げる。

「何だよ、お前ら?揃いも揃って、人を疑うのか?」

「ごめん、イアン。目の前の事実を受け止めることができなくてね…」

レイはイアンの答案に視線を向けた。

そこに書かれた点数はどの教科も八割を超える。

特に算術に至っては満点であった。

「これ、私たちが教える必要あった?」

「この分だと、イアン一人で何とかなったかもね」

「貴方、勉強が苦手というわけではなく、ただ単に嫌いなだけですわね?」

その場にいた面々がイアンを冷ややかな目で見ていた。

さすがにその空気を感じ取ったのか、イアンは弁明を始める。

「勉強が嫌いなのは確かだ。今回もお前らに促されなかったら、もっと酷い点数を取っていたはずだ。だから、感謝はしている。本当だぞ?」

焦りを見せるイアンに皆がため息をついた。

「まあ、今回のことでわたくしたちにもよい影響がありましたわ」

「そうだね。イアンに教えるのは自分の勉強にもなったと思うよ」

「私も勉強会でセシリア様やレイ君と距離を縮められたのは嬉しかったわね」

「それはよかった」

「ですが!」

セシリアがイアンに鼻先に指を突きつける。

「貴方がやればできることは証明されましたわ。よって、今後は一人で頑張ること。いいですわね?」

「それは酷くないか?」

「自業自得でしょ」

「…レイ、お前もか?」

「うん、セシリアの意見には僕も賛成だね」

「嘘だろ…」

レイにも見放され、イアンは頭を抱える。

「ところで、順位はどうだったのですか?まあ、この点数だと上位には入っているでしょうが」

「座学18位の実技3位、総合で9位だった。お前は総合1位だろ?」

「ええ。座学が5位でしたけれど、実技で1位を取れましたから」

「さすがセシリア嬢だね」

「何を言うのですか?貴方は座学1位でしょう?」

「まあ、実技が足を引っ張って総合は12位だったけどね。オルガ嬢は実技2位だよね。イアンより上位だなんて驚いたよ」

「こいつの弓は的を外さないからな。それに魔法も相当だったぞ。教えてもらいたいくらいだ」

オルガは褒められたせいか、顔を少し赤らめて、耳もピクピクと動いていた。

「何というか、上位陣はすごいわね…あれ?クレア、どうしたの?」

途中からやけに静かだったクレアはしゃがみ込んで顔を両手で覆っていた。

「私、座学20位だった。イアン君に負けてる…」

「あー…そういえば、イアンに得意気になって教えていたわね」

「私、恥ずかしい。穴があったら入りたい…」

「まあまあ、次頑張りましょ」

リンダは背中をさすり、クレアを慰める。

こうしてイアンたちは学園一年目を無事に終えた。

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