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17.班員探し

イアンたちはローウェル男爵領の復興に長期休暇を丸々費やし、新学期を迎えた。

休暇というのに毎日仕事で忙しくはあったが、懐具合は予想以上に潤い、イアンはかなり満足していた。

また、レイも実際の領地運営を経験するという当初の目的を十二分に達成したようで、イアンを相手に嬉々として語る。

イアンがレイの話に適当に相槌を打っていると、ギルバートが教室に入ってきた。

「さて、新学期に入って早速だが、一月後に野外演習が控えている。説明をするから、よく聞いておけよ」

ギルバートは書類を全員に回して、説明を始めた。

野外演習の大まかな内容としては以下の通りだ。


・演習の目的は対モンスター戦の実戦経験を得ること。

・演習期間は一週間。

・演習地は当日まで秘匿される。(貴族の子息・令嬢が参加するためらしい)

・演習においては、四人一組の班で行動する。班は他クラスの者と組んでもよい。


ギルバートは説明を済ませ、生徒からの質問を大方捌いた後、大きく咳払いをした。

「最後に、演習への参加は強制ではない。自信がない者は止めておけ。参加の意志がある者は申込用紙と同意書を提出しろ。以上だ」

配られた同意書に目を落とすと、死亡時に関する事項も記載されていた。

演習とはいえモンスターとの戦闘だ。

命を落とす可能性は十分あり得るということなのだろう。

「イアンはどうするつもりだい?」

ギルバートが教室を出て行った後、レイが話しかけてくる。

「俺は参加する。実戦経験は早いうちに積んでおいた方がいい」

「イアンならそう言うと思った。僕も参加するつもりだけど、一緒に班を組んでもいいかな?」

「他に誰と組むんだよ?俺はお前以外の奴と組む気はないぞ」

「そう言ってもらえると嬉しいね。でも、今回は四人班だよ。あと二人誘わなくちゃならないけど、当てはあるのかい?」

「…ないな」

レイの問いかけに、イアンは眉をひそめる。

生徒のほとんどが貴族で占められている学園において、平民であるイアンに声をかける者はほとんどいない。

いたとしても、レイのような比較的身分に寛容な者くらいだ。

また、イアン自身も積極的に友人作りをする性格でもない。

そのため、イアンが友人と呼べる相手は学園にレイとクレアしかいないというのが現状だ。

ただ、その友人の一人であるクレアを誘ってはみたが、あっさり断られる。

どうやら戦闘の経験がないことを理由に初めから演習参加を辞退するつもりだったらしい。

戦闘学の講義において、クレアは戦闘訓練ではなく基礎体力向上訓練(戦闘ができない生徒を対象にした訓練)に参加していたので、当然と言えば当然だろう。

レイに任せようともしたが、今回レイは何故か協力的でなく、班員集めはイアンに一任された。

というわけで、早々に伝手がなくなったイアンは頭を抱えることになる。




「貴方たち、わたくしと野外演習の班を組まないかしら?」

放課後の特訓終わりに、唐突にセシリアから勧誘される。

イアンとしては、セシリアと班を組むことなどまったく想定していなかった。

だが、よくよく考えてみれば、実力を把握している者が仲間になるのはメリットが大きい。

イアンはセシリアを班に入れることを即決したかったが、念のためその意図を確認する。

「俺たちの他に組む奴はいないのか?」

「いませんわ」

セシリアはイアンの問いかけに即答した。

「わたくしは、わたくしが実力を認めた方としか班を組む気はありません」

「つまり、俺たちは認められたということか?」

「ええ。わたくしに敗北を与えたイアンはもちろん、ギルバート先生の特訓を受けるレイも十分な実力があると見ていますわ」

「僕もかい?セシリア嬢に認めてもらえるとは嬉しいね」

レイは少し照れくさそうに頬をかく。

「それに、貴方たちはわたくしと組むべきだと思いますわ」

「どういうことだ?」

「まず、イアン。この学園では身分など関係ないと謳っていますが、かつてのわたくしのように、貴族の子女の大半は貴方のような平民を下に見ていますわ。その状況下で、貴方が誘ったところで受け入れられることはほぼないといってもいいでしょう」

「…否定できないな」

イアンは腕を組んで唸った。

確かに絡まれることはあっても、親しみを持ってイアンに声をかけてくる者はいない。

さらに、イアンからクラスメイトに話しかけても無視されることは未だにある。

セシリアの言うことはおおよそ間違いではないだろう。

「それから、レイ。貴方は逆にしつこいくらいに勧誘を受けているでしょう?」

「知っていたのかい?」

「ええ。わたくしのクラスでも貴方の名前はよく耳にしますわ」

「どうしてそんなことになっているんだ?」

「レイが侯爵家だからですわ。侯爵家の後ろ盾を得たい下位貴族は、レイと繋がりを持ちたいと画策しているのです」

「派閥ってやつか?面倒だな」

「本当にそうだよ。中には君を貶すような言葉を口にする人もいるし、不快にさせられるばかりだよ…」

レイはうんざりしたような口調で返答した。

イアンは、レイが休み時間が終わる度に疲れたような表情をしていたのを思い出す。

「で、それがお前と班を組んだ方がいい理由になるのか?」

「ええ。イアンは演習の班の人数を揃えられる。レイは同じ班に公爵家のわたくしがいるとなると、余計な勧誘はなくなる。どうでしょう?いい提案だと思いません?」

イアンとレイの抱える問題を同時に解決できるという点で、セシリアの提案は確かに魅力的だった。

だが、イアンはセシリアに対して再度確認を行う。

「お前はそれでいいのか?平民の俺と組んだら、それこそ噂になるんじゃないか?」

「舐めてもらっては困りますわ。わたくしは公爵家の令嬢。わたくしが班を組むと宣言すれば、誰も文句を言わないでしょう」

セシリアの発言はむしろ誰にも口を出させないないと言わんばかりだった。

その言葉にイアンは結論を出す。

「分かった。お前と班を組もう」

「すばらしい判断だと思いますわ」

セシリアは僅かに笑みを浮かべた。

「ところで、あと一人足りないがどうするんだ?」

「わたくしに当てがあります。彼女の実力なら、貴方たちも納得させられるでしょう」

「そうか。それなら任せる」

「では、後日紹介しますわ。それではごきげんよう」

セシリアは軽い足取りでその場を去って行った。


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