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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

失恋話はほどほどに

作者: 如月 沙奈

好きな人いないの?

そう聞かれたら大抵の人はいないだとか、実は〇〇君が好きなのだとかと言うだろう。

私の場合前者だ。


じゃあ、嫌いな人を聞かれたら?

普通、返答に困ると思う。

でも私は即答できる。

幼馴染が嫌いだと。

この世で1番、あいつが嫌いだ。



私の初恋は同じマンションに住む同い年の男の子だった。マンションで唯一の同い年の子でよく遊んでいた。

可愛くて優しくて正義感の強い男の子だった。

でも、仲が良かったのは小学校3年生くらいの頃までだった。

それまでは登下校も一緒だったのに段々と避けられるようになったのだ。

理由は今でもわからない。

好きな人に避けられるというのは結構メンタルに響く。

当時の私はとても不安だった。




本格的に嫌われていると気づいたのは、中学生になったばかりの頃。

私とあいつは違うクラスだったけど、私は吹奏楽部に入ったから教室を使うためにあいつのクラスに入ろうとした。

その時だ。

「栞?別に仲良くねーよ。むしろ苦手。いつもくっついてきて邪魔なんだよな。きもい。」

あいつの声が聞こえてきた。

私の頭の中は真っ白になって思わずその場から駆け出した。

辛い辛い辛い。

そんな気持ちだけを未だに覚えている。




「と、まあ。これが私の初恋兼失恋だね。」


中川栞。高校一年生。

今は昼休みを使って失恋暴露大会を開いています。


「うっわ。最低じゃん。」

「相手、どこ高?ぶん殴りに行こーよ。」

「殺すのが1番手っ取り早い。」


話を聞いたイツメンの3人がなにか物騒なことを言い出す。


「こらこら。物騒なこと言わないの。もう終わった話だしね?」


今は本当にもう気にしていないのだ。

あいつとは会っても話さないし、というかほとんど会わない。

それに私には新しい恋人がいるから。


「それより次は瑞稀じゃん。早く話してよ。」


あまりにも3人がご立腹だったから私は次話す番だった瑞稀を急かす。


「残念。私は今の恋人が初恋だから。失恋経験なしでーす。」


瑞稀は何やらすごいスピードでスマホで作業しながらそう答えた。


「えー!なにそれ。しんど。ずるっ!莉子なんて5回も失恋してるのに!」


「それは莉子が惚れっぽいからでしょ?うちだって1回だもん。」


「惚れっぽくなんかないし!杏奈だって元カレ4人いるでしょ‼︎」


今度は莉子と杏奈の言い合いに発展してしまい、昼休みはあっという間に過ぎてしまったのだった。





「ねえ、栞。浅井礼央とかいう男ぶっ潰しに行っていい?とりあえず社会的に。」


学校からの帰り道。

何故か私の幼馴染の名前を瑞稀は知っていた。


「ん?瑞稀さん?なんで名前知ってるのかな?」


「207号室に住んでて、渠高校1年5組。野球部に入るも、3ヶ月で退部。根性なしで最低クソ野郎の浅井礼央君でしょ?」


確か、瑞稀は昼休みずっとスマホを触っていた。

私の初恋相手に関して調べていたのだと今気づいた。


「っていうか、恋人が昔泣かされたって聞いて黙ってられるわけないじゃん。」


瑞稀はそう言って笑ったが、目が全く笑っていなかった。

そう。実は私達は付き合っている。




瑞稀とは席が前後で好きな漫画が一緒だったり、趣味が一緒だったりと、そういう偶然が重なり仲良くなった。


初めは普通に親友だった。

好きになったことがあるのは男子だけだったし、女の子を好きになったことはなかったから。


瑞稀を意識するようになったきっかけは、本当に自己中心的な理由。

私は愛されたい欲求が強いのだ。

3人姉妹の真ん中に生まれて、親からもあまり構われずに育った私は自分を1番に見てくれる人が欲しかった。

小さい頃は幼馴染が運命の人だと信じて、依存していたのかもしれない。

だから、幼馴染だけが悪いわけじゃないのだ。

そんな私を瑞稀はいつも最優先してくれた。

クラスで仲良い4人グループの中でも瑞稀は私を1番にしてくれたのだ。

好かれるよりも好きでいたい!という人もいるけど私は好かれていたい。

勿論、自分も好きでいたいけど自分の事を好きじゃない人をずっと好きでいるのは無理だと思う。

だから、きっと私は片想いに向いていない。


そんな私は瑞稀に片想いしているのが辛かったため、すぐに告白してしまった。

フラれたくなくて泣きながら縋るようにして好きを伝えたけど、瑞稀は優しく受け止めてくれた。




というわけで付き合えてほんとに嬉しいんだけど、瑞稀は少しいやかなり?過保護である。

今のが良い例だ。


「いや、大丈夫よ?ほんとに気にしてないし。」


瑞稀がなんかやらかしそうだなと思い、やんわり断る。

「うん。わかってる。だから栞はなんも気にしなくて良いよ。」


絶対わかってない。私は心の中で苦笑しながらも、

「ほどほどにね。」

そう言って瑞稀の腕を掴んだ。

こうなった瑞稀はもう止められないのは経験上わかっている。

だから、出来るだけ穏便に済ませてもらえると良いなと思いながら私は笑った。




3日後


「ねえ知ってる?」

久しぶりに中学時代の友達と会い、世間話をしていると、急にこんな話を切り出された。

「なんかあったの?」


「いや、浅井礼央っていたじゃん?中学に。あいつ、高校退学したんだって!」


そこからも友達は何か言っていたが私の耳には入っていなかった。

だって、、、。

もしかしなくてもこんなこと、瑞稀の仕業に決まっているからだ。

言い忘れていたけれど、瑞稀は東條グループという企業のお嬢様である。

次期後継者として人脈、情報に関しては誰にも負けない。


もちろん、浅井にはひどく傷つけられたし、当時は落ち込んだけどここまでされると罪悪感でいっぱいになる。


私の恋人は私が好きすぎるんじゃないだろうか。

恋人に昔の話をする時は気をつけたほうがいい。

失恋話はほどほどに。


ちなみに、瑞稀は身長170㎝、栞は153㎝です。


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