人形をさ
「見ろ。この人形かわいくね?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いくら人形がかわいくても、あんたはかわいくならないわよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「うむ。人形のかわいさを認めてくれたのはありがたい。それとは別にふざけるな」
「丁寧な感想をどうも。感想文なら学年代表に選ばれるわね」
「なんの話だ。まあ、人形を貶さなかったから見逃してやろう」
「あざす」
「クソが……それより人形だよ。昨日、散歩中に見つけた人形屋で買ったんだけどさ」
「へー。いくらしたの? というベタな質問」
「いや、ベタでいいよそこは。逆に何円だと思う?」
「ぎゃー、ベタなくせにうざい。こっちが質問してんのによ」
「いいから、答えてみよ」
「1534ゴールド」
「……なんで端数まで当てられるかね」
「やりー。景品は?」
「この人形以外なら」
「うん。その人形はいらんわ」
「おい! そんな悲しいwinwinごめんだぞ」
「あっそ。てか意外といいお値段ね。明日の飯代でも削ったの?」
「そんなに切迫してないわい。まあ、今晩は豆三粒になったがな」
「十分切迫してるじゃないの。大丈夫なの?」
「三粒で平気なわけないだろ。せめて四粒だろ」
「豆一粒のパワーが計り知れない。まあ、完全に自業自得だけど」
「とういうわけだから、このココアはお前のおごりな」
「……豆、鼻に押し込むわよ」
二人は喫茶店をあとにした。