船旅したいな
「船旅って憧れない」
角のとがったデビルの少女が言った。
「うっ、吐き気が……」
耳のエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「どういうこと? なにゆえ開幕早々にリバース宣言?」
「いや、船って言葉を耳にすると酔うのよね、私」
「斬新。スゲー斬新な船酔いだな」
「……あーあぶなかった。全く、気をつけてちょうだい」
「いやすまん。そんな特異体質があるとは思わなんだ」
「で、何の話? ○旅がなんだって」
「伏せた! そこまでするか。えーとあの、乗り物で海を渡りながらの旅って憧れない?」
「回りくどいわね。そこは船旅でいいしょ……うぷっ」
「おい! 自爆すんなよ! アタシの努力が水の泡だろ」
「いやーあぶない。気をつけてちょうだいな」
「お前がな。あーもう話が進まんな。お前はそういうの憧れないのか?」
「え? 何に憧れないって?」
「いや、わざとだろ! 完全に誘導してるだろ。タチが悪いな」
「こう見えて、タチの悪さと寝相の悪さには定評があるのよね」
「どう見えてだ。確かに前に民宿に泊まったとき、お前ブレイクダンスみたいな体勢で寝てたけど……じゃなくて質問に答えてくれ」
「まあ、憧れないんじゃない? この程度で酔ってるし」
「そりゃそうだな。残念だ、お前と一緒にふ……○旅でも行きたかったんだがな」
「ん? その○は何?」
「だから誘導すな!」
二人は喫茶店をあとにした。