魔法の呪文をさ
「ネムクナール・オマエ!!」
角のとがったデビルの少女が言った。
「とうとうイカれたか。短い間だったが楽しかったわよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「おいおい。他人を狂人認定した挙げ句に絶縁とは横暴な奴め」
「正気に戻った……いや、あんたはデフォルトが狂人だったわね」
「生まれてこのかたマトモだったことがない。ってコラ」
「乗りツッコミのできる狂人とは希少ね。絶滅危惧種に認定しましょう」
「こんな狂人相手に手間をとらせては学会にも迷惑だろ。じゃなくて、魔法だよ。さっきのは魔法の呪文だ」
「あ? さっきのカネアゲールオマエニってやつが?」
「おい! 勝手に呪文をお前にアドバンテージがあるものに書き換えるなよ」
「ちっ、勘のいい奴め」
「あぶねぇあぶねぇ。あやうく、意味もなく散財するところだったぜ」
「というか、あんたいい歳して魔法なんて信じてるの?」
「すいません、一応ファンタジーって体でやってるんですけど」
「おっとうっかり。じゃあここは気を利かして魔法にかかっといた方がいいわね」
「頼むよ。つーか忘れちゃだめだろそこは」
「グーグー」
「寝たよ! あーうまいこと逃げられたな。まあ、これでアタシも晴れて魔法使いの仲間入りだな」
「そうね。おめでとう」
「ありがとう……もう起きたのか」
「あんたの魔力じゃ、私を眠らせるのなんて2秒が関の山よ」
「2秒だけ寝れるお前の方がすげぇよ……」
二人は喫茶店をあとにした。