メンタルをさ
「メンタルって、鍛えたくない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「前から思ってたけど、その角ダサくね?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「早い早い! トレーニングスタートが早いよ。さっそくメンタルにダメージ入ったんだけど」
「善は急げよ。短足野郎」
「急ぎすぎだろ。鍛え終わるより前に、アタシの精神が終わりそうなんだが」
「えー。まあ、飴と鞭が大事か……」
「……何だよ?」
「……歯並びがキレイですね」
「下手! 鞭に対して飴が下手すぎる! なんでそんな微妙なところ誉めた?」
「ごめん。別に歯並びよくないわね」
「だから鞭を入れるな! 一回上げた分の落差で大ダメージなんだが」
「出る釘は打っとかないとね」
「打つどころか粉砕してるだろ。木材ごと砕け散ったわ」
「力の加減もできないなんて、どうしようもないやつね。私って」
「お前かよ。なんでお前自身に鞭を入れはじめるのだ」
「これぞセルフメンタルトレーニング」
「飴は?」
「美少女すぎるわね。私って」
「台無し。飴が甘過ぎて、鞭が台無しよ」
「まあまあヒガみなさんな、不細……ブス」
「言い直した意味! つーか急にこっちに鞭を入れるな」
「ストレスはいつどこからくるか分からないわよ」
「それはそうだけど」
「納得すんのかい。メンタル強すぎだろ」
二人は喫茶店をあとにした。