泣けてくるな
「辛い……泣けてくるぜ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「そのまま干からびろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「前言撤回。怒りが沸いてきた」
「カルシウム不足め。角でも食ってなさい」
「わお。自給自足」
「よかったわね」
「何もよくないだろ。干からびろとはなんだ、ちったぁ労えよ」
「500ゴールド」
「……」
「悩むんかい。どんだけ労われたいのよ」
「まあ、聞いてくれよ」
「500ゴールド」
「追加料金! お財布に優しくない」
「だけど世界に優しい」
「世界にとってアタシはなんなのだ」
「まあまあ、いいから話しなさいな」
「聞くのかよ。えーあれだよ、食べられたんだよ限定品のチーズケーキをネズミに」
「文法めちゃくちゃね。訳文かなにか?」
「そこはいいだろ。悲しくない? 半日並んでまでして買ったレアもんだったんだぜ」
「大丈夫よ。ケーキもあんたよりネズミに食べてもらえて本望でしょ」
「アタシはケーキになにかしたのか? かーっ、悔しいなぁ」
「まあ、元気出しなさいな……ってことで、ほらあれを」
「あ? あれって何だよ?」
「合計1000ゴールド」
「いや誰が払うか。つか、全然労ってねぇし」
二人は喫茶店をあとにした。