学者になりたいな
「あれだな。学者になりたいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「赤ん坊からやり直せ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「何ぃ? 今からでは無理だと言いたいのか?」
「無理だと思わない程度の頭じゃ無理ね」
「そうか。よし」
「いや、納得しないでよ。本気でやり直す気?」
「ああ、短い間だったが世話になったな。さらば! 来世で会おう!!」
「来世ではごめんしたい」
「冷た! ふざけんなよ。そんなんじゃ未練が残って現世をやめれないじゃないか」
「簡単に現世をやめられると思ったら大間違いよ。私が終わらせないわ」
「かっこいい」
「意地でもあんたをこの過酷あふれる現代社会に縛り付け続けてやる」
「最悪。ただのクソ野郎じゃねぇかよ」
「クソなのは現代社会だと気づけよ!」
「安定の情緒不安。学者の話題どこいったよ?」
「知らんわよ。学者ってワードがアバウト過ぎでしょ。何の学者になりたいのよ」
「何でもいいよ。なりやすいやつでさ」
「世界中の学者にひっぱたかれろ」
「学者はそんな暇じゃねぇだろ。楽なのがいいな」
「じゃあ、おすすめがあるわよ」
「ほう、何さ?」
「エルフ学者」
「そんなんなるなら、赤ん坊からやり直すわ」
「おい」
二人は喫茶店をあとにした。