うどん食いたいな
「うどん食いたいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「喫茶店にうどんないだろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「……久しぶりに正統派なツッコミいれたな」
「正統派なボケをしてくれたおかげよ、へへ」
「へへへ」
「へへへ……なにこれ? 気持ち悪いんだけど」
「あたしという概念よりは気持ち悪くないだろ」
「それな!」
「うぜぇー、否定しない上に軽いのがウザさを際立たせていますね」
「自分で言っといて何を言うか。うどんより図太い奴だな」
「こいつは一本とられたね、っと」
「チャンチャン!」
「早い早い! オチが早すぎる! 疾風のドラゴンかよ!」
「え、なにそれ? 共通認識ちゃうんやけど」
「すまん。今のは無理があった、謝罪する」
「慣れないファンタジー要素を入れようとするからよ」
「そうだな……って、なんでこんな怒られにゃならんのだ。たまにはこういう要素入れとかないと」
「いや、うどんはどうしたのよ」
「忘れてた。んーなんか、うどんよりそば食いたくなってきたな」
「今さらだけど、ファンタジー路線でやれうどんだ、やれそばだってどうよ?」
「ダメだろ。言い替えなきゃ」
「ダメなのね。えーなんて言えばよいかしらね?」
「……粉……粉の、あの……えー」
「粉の……粉の……麺! 粉麺! でどう?」
「どっちがよ? うどん? そば?」
「え? じゃあ……うどんで」
「分かった。じゃあやり直すわ……あーなんか粉麺食いたいな」
「なにそれ……こわっ」
「ふざけんなよ」
二人は喫茶店をあとにした。