あくびが止まらなくてさ
「ふぁああ……ねむ。あくびとまんねぇな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「お迎えが近いんじゃない?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「永眠? 死ぬのか、アタシ?」
「いや、既に死んでるみたいなもんでしょ。安心しなさい」
「どういうカウンセリング? 人をゾンビ扱いするなよ」
「そうね。全国のゾンビに失礼ね」
「そうだな……ふぁあ」
「おい、突っ込みをさぼってんじゃねぇぞ」
「悪い悪い。眠いんだよ、許してくれ」
「いや許さん。末代まで呪ってやる」
「ふぁあ……そうだね」
「ひどいなぁ。今日のあんたひどいわね」
「いつものことだろ」
「ついにボケ始めちゃったよ! 何よこれ、今日は私がツッコミ?」
「…………ふがっ!」
「寝てたよ!! 今、一瞬寝てたよね?」
「ふぁあ……お迎えが近いんじゃない?」
「さっき言ったやつ! せめて、違うテキストで返そうぜ」
「…………すぅー………すっ」
「寝たぁ!! ついに寝やがった!」
「……もう……食べられないな」
「ベタ! 寝言がベタすぎだろ! 手垢まみれの台詞吐いてんじゃねぇぞ!」
「…………」
「言えよ! せめてなんか言えよ! 三点リーダーで済ますなよ!」
「……」
「……」
「……」
「……疲れたな、私も寝るわ」
「いや、寝るなよ。話が成立しなくなるだろ」
「……そんな急に起きるなよ」
二人は喫茶店をあとにした。