店が潰れてさ
「おい知ってるか? 役場前のラーメン屋潰れたらしいぜ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「人の不幸を笑うなよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや、別に笑ってないんですけど。潰れてびっくりしたって話のフリってだけで」
「ああそう。悪い、早とちりだったわ。笑ってくれ」
「笑うなつったり笑えつったり忙しいやつだな」
「まあ、お前よりは忙しい人生おくってるよ」
「おい! 人を暇人みたいに言うなよ。事実だとしても傷付くだろ」
「認めるのか……まあ、元気だしな。役場前のラーメンでも食いに行こうや」
「だから、潰れたつったろ!? 話聞いてた?」
「聞いてないけど」
「聞いてないのかぁ……じゃあもうどうしようもないわ」
「まあ、元気だしな。役場前のラーメンでも」
「ループ!! メビウスの輪!! 運命の輪から抜け出させてくれ」
「どうぞご自由に」
「セルフサービスかよ。まあ、あんなに旨かったのに潰れるなんてびっくりだよな」
「お、おう。そ、そうね」
「美味しくなかった奴! 美味しくなかった奴の反応」
「私、脂っこいの苦手なのよね。乙女だから」
「いちいちマウントをとるな。まあ、人好き好きだからな」
「他人を異端者扱いするなよ。反吐が出る」
「反吐を出すな。鳥肌が立つわ」
「反吐に鳥肌、今日は出血大サービスね」
「色々分泌しすぎだろ。血まで出したら何も残らんぞ」
「そう、まるでラーメンのどんぶりの様に」
「完食してんじゃねぇか! ……美味かったんだろ、ラーメン?」
「ええ。またいつか、食べる日が来れることを願いましょう」
「そうだな……すげー普通に締めやがった」
二人は喫茶店をあとにした。