小銭ある?
「あれだ、小銭くれよ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「じゃあ肩叩きお願い」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「お駄賃! どこのキッズだ。紙幣と小銭を交換してくれと言ってるのだ」
「えーどうせ偽札でしょ?」
「どうせ? ……人聞き悪すぎだろ。まるで、いつも偽札使ってるみたいな言い方だな」
「え……本物だったの?」
「ひっぱたきてぇ。札束で顔面ひっぱたきてぇ」
「カネを粗末に扱うんじゃないわよ。身ぐるみはいで、海に捨てるわよ」
「お前こそデビルを粗末に扱うな。せめて、パンツは履かせてくれ」
「上はいいのかよ。基準がよくわからんな」
「基準は分からんでいいから。両替を頼む」
「分かったわよ。1000ゴールド紙幣を受け取ったから、10ゴールド渡すわね」
「待て待て。どごの世界にそんな世知辛い両替があるのだ」
「手数料を引いたのよ」
「足元を見すぎだろ。流石のアタシも気づくわ」
「ちっ、小賢しいデビルだ。ほらよ10ゴールドを、100枚」
「嫌がらせ! 嫌がらせの達人! どこにそんな持ってた?」
「それは乙女のヒ・ミ・ツ」
「乙女の懐どうなってんだよ。まあ、別にいいや、サンキューな」
「それでいいのかよ。ジャラジャラうるせぇな」
「お前が渡してきたんだろうが!」
二人は喫茶店をあとにした。