ちり紙ない?
「ズズっ! ……あー鼻がやばい。ちり紙ない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「家にある」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「くだらねぇーっ! 超絶にくだらない返答や! アタシにお前ん家までついて来いというのか?」
「やべぇ! ストーカーだ! 110番してブタ箱にぶちこまなきゃ!」
「待て待て! まだ未遂であろう」
「未遂だろうと豚はブタ箱へ」
「なにそのゴミの分別的なキャッチコピーは? あと、どんだけアタシをブタ箱にぶちこみたいんだよ」
「あんたはゴミ箱の方がお似合いね」
「どっちも似合ってたまるかよ……ズズ」
「そうね……ズズ」
「ズズ……ん? おい! 鼻をすする音を語尾にするな!」
「え? ああ、鼻の音か。新しい語尾かと思ったわ」
「ふざけんな。どんな語尾だよ」
「こっちの台詞だよ」
「だから語尾じゃねえズズ!」
「いや、なってるんですけど……」
「ああくそぉ、お前が変なこと言うからだ」
「そうね。すまなかったズズ」
「反省の色! 無色透明! バカにしてんのかよ」
「当たり前だろ!」
「ええ……まあ、バカにされるのはいつものことだからいいとして」
「いいんかい」
「それよりも、なんか鼻をかむものをだな」
「手で拭けば?」
「は? 拭いた手どうすんだよ?」
「ちり紙で拭けば?」
「だからちり紙がねぇの! ……ズズ!」
二人は喫茶店をあとにした。