釣り行かない?
「今度の休みさ、釣りに行かないか」
角のとがったデビルの少女が言った。
「魚屋で買えばよくない?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ん? なんか話が飛躍してないか? 釣り行きたいって話なんだが」
「いや、わざわざそんな面倒なことしなくても、魚屋で買えるでしょ、魚ぐらい」
「お前はアホかぁ? アタシは魚がほしいのではなくて、釣りをしたいんだよ」
「分かってるわよ。見くびらないでちょうだい」
「ひねくれ者めが。話の腰を折るでないわ」
「腰を折ると言えば、この前ね……」
「うぉい! さらっと話題を変えようとするな! どんだけアタシの話に興味ないんだよ!」
「分かったわよ。続けてちょうだい」
「まったく……って、この前に何があったんだ?」
「あんたの方から食いついて来てどうすんのよ。魚か? お主は」
「うまい! 座布団一枚!」
「ありがとう。後で質に入れとくわね」
「売るな売るな。いやすまん、今のはアタシが悪かった」
「そうよ。この前押し入れを整理していた時に……」
「だからその話を進行さすな! 優先順位を守れや、アタシの話が先だ」
「我よ我よと、相変わらず傲慢な奴ね」
「そんなに傲慢だった覚えはないのだが。まあいい、簡潔に言おう。一緒に釣りを楽しまないかい?」
「冒頭と何も変わってないのだけど。まあ……いいけど」
「いいんかい! じゃあ最初からそう答えろや」
「私、押しに弱いのよね」
「知るか。お前なんぞは押し入れに入っとけ」
「うまい。座布団一枚」
「やかましいわ」
二人は喫茶店をあとにした。