回復薬ってさ
「回復薬ってどういう原理?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「何その、急なファンタジー要素を含んだ話題」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いやほら、たまにはやっとかないと。気を抜くとすぐにファンタジー設定忘れるからさ」
「それは一里ある。肝に命じておけ」
「お前もな。で、回復薬だよ」
「まあ、存在はしてるだろうな。ファンタジーだし」
「そっから? とりあえず、あるってことで話を進めさせてくれ」
「いいよ」
「素直オブ素直。それでえー、原理だよ回復薬の。飲むだけで完治するって明らかにやばいだろ」
「やばいわね。私の預金よりやばいわね」
「お前の懐事情は知らねぇよ。あとさ、何かものによっては体が一瞬光るしよ。みんな当たり前のように飲んでるけど、どうなのよ」
「どうなのよと言われてもねぇ。あんたの角もどうかしてるし」
「お前の耳もな」
「……この角と耳のディスり合いのくだり、何回目よ」
「お前が言って来たんだろ! 何を飽きたみたいな顔してんだよ!」
「いや、実際飽きてるからさ。いっそのこと、耳を丸くしようかと」
「丸くするなら性格が先だろ」
「おあとがよろしいようで」
「終わらすな! 回復薬だ! お前の意見を述べよ!」
「何その、答案用紙的なあれは。まあ、そうね……」
「なんだ?」
「あなたこそが、私の回復薬なのよ」
「……」
「……スベった?」
「……うん、くすりともしないな」
「……クスリだけに」
「……おあとがよろしいようで」
二人は喫茶店をあとにした。