世界にさ
「そろそろかな、世界に目を向け始めるのも」
角のとがったデビルの少女が言った。
「キモ。どっかぶつけたりしたか?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「……さっそく目の前に目を背けたくなる発言する奴がいるなー」
「受け止めようぜ。現実をさ」
「いや、厳しすぎるだろ。話題振っただけで、気持ち悪いって言われるってどんだけだよ」
「じゃあ、気持ちいいで」
「なにそれ? 逆に気持ち悪いんだけど」
「今の言葉、逆に気持ちいい……」
「マゾヒストが。いや、お前はサディストだろうが」
「横文字使えばかっこいいと思ってるでしょ」
「当たり前だろ。横文字使ってればだいたいの不都合はごまかせる」
「そうだな。いや、ソウダナ」
「宇宙人? 急な世界観の拡大はよしてくれ」
「いや、中盤から登場する謎の中華風のキャラ」
「そっち? だったら分かりやすく語尾にアルをつけてくれ」
「アル中アル」
「ひどいな。第一声が不健康カミングアウトってどうなのよ?」
「いいんじゃない? 親しみやすくて」
「範囲が限定的すぎるだろ。全員、酒に殺されるぞ」
「その前に社会に殺されるけどね……」
「どういうこと? なんか嫌なことあったのか?」
「嫌なことあったから、酒飲んでんだろうがよ!」
「知らねぇよ。お前が飲んでるのはパフェだろ」
「パフェが飲み物とはよく言ったものだ」
「言ってねぇよ。どのみち糖分に殺されるな」
「で、世界がなんだって?」
「もういいよ。お前の世界観にはおよばないからな」
「マアネ」
「うぜぇ……」
二人は喫茶店をあとにした。