免許をさ
「いやー、欲しいなー。魔導車の運転免許」
角のとがったデビルの少女が言った。
「どうせペーパードライバー化するくせに、ププッ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「むかつくわぁ。いとこと一緒のこというなよ」
「ええ……ショックだわ。私の発言レベルはあんたの血族と同程度なのか……」
「何その、多方面に喧嘩売るスタイルの落ち込み方。逆にすごいな」
「ありがとう。嬉しいよ」
「いやいや、嬉しがるなよ。いとこの尊厳を踏みにじっといて」
「そうね。踏むのはいとこじゃなくて、ブレーキよね」
「何を上手いこと……いや、上手くないな。なに言ってんのお前?」
「ちっ、気付いたか。その注意力があれば、安全運転できそうね」
「何でお前がアタシの教官ぶってんだ。免許持ってないくせに」
「あれ? 言ってなかったけ?」
「え? ……マジ? 持ってんのか?」
「いや、持ってないけど」
「なんなんだよ! ……世界一、意味のないやりとりだった」
「思い込むのが早すぎるわね、そんなんじゃ安全運転は不可能よ。もっと慎重に他の情報に気を配らないと」
「何をいっちょ前に……まあ、一理あるか」
「ねぇよ。アホか」
「ええ!? なんでよ? いい線行ってると思うけど」
「マジ? へへへっ」
「素でよろこぶでない、気持ち悪い。まあ、別に急ぐ必要はないかな」
「何でよ?」
「……金がないし」
「えっ……ああ、車買う金?」
「いや……受講料を、ね」
「……」
「……」
「……パフェ、奢るよ」
「……ありがとう」
二人は喫茶店をあとにした。