外国語をさ
「そろそろあれだな、外国語でも極めるか」
角のとがったデビルの少女が言った。
「え? 国外逃亡?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「すーぐ、犯罪者扱いするな。お前は」
「事実なので。へへへ」
「笑い事じゃないよ、冤罪よ冤罪。アタシが何したっていうのさ?」
「器物破損」
「は? アタシなんか壊したっけ? お前家の小さい棚以外で」
「おい言った。今、言ったよ答えを」
「三日前のことなのに根に持つねぇ。しょうがないだろ椅子かと思ったんだから。床に置いとくお前が悪いわ」
「ふざけんなよ。あれ高かったのよ」
「マジかよ? いくら?」
「えー……木の板が一枚、100ゴールドで」
「DIY! まさかのDIY。自作だったのあれ?」
「そうよ。私の汗と涙と血の結晶よ」
「血? ケガしたのか?」
「いや、テンション上がりすぎて鼻血出ただけ」
「どんだけDIY満喫してんだよ。えー、そう言われると申し訳なくなってくるな」
「そう言われなくても申し訳なく思ってください。まあ、いいわよ、また作るから」
「そいつは大変だろ。アタシも手伝うよ」
「いいぜ。ただし足だけは引っ張るなよ、フッ」
「何キャラだよ。じゃなくて、外国語だよ。これからの時代、話せる言語は多い方がいいだろ?」
「言語なんかなくたって。一緒にメシ食って笑い会えば、ブラザーさ」
「かっこいい。かっこいいけど、ちょっとハードル高いな」
「まあ、あんたの場合は標準語さえあやふぃっ……」
「……噛むやつに言われたくねぇよ」
二人は喫茶店をあとにした。