新しいことをさ
「何かあれだな。新しいことがしたいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「その前にダイエットしろよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「……」
「……」
「……何かあれだな。新しいこ」
「おいおい、なかったことにするなよ。現実を見なさい」
「見たくねぇ、見たくねぇよ」
「それはこっちの台詞よ。見たくないわよ、あんたの二重あご」
「ふざけんな。まだ1.5重ぐらいだろ」
「それもう四捨五入で2だろ」
「やっぱ今のなし。1.4で」
「ギリギリ! ギリギリを責めるねぇ。意地でも二重あごを認めなくないのね」
「うるせぇな。確かに最近、顔周りの肉が若干、幅きかせてる感じがするけどさ」
「認めろ、デブ」
「直球やめろよ。まあ、ダイエットはやるよ。それとは別になんか新しいことしたくてな」
「スイーツ巡りとか?」
「……お前は、アタシを痩せさせたいのか太らせたいのかどっちなのだ」
「じゃあスイーツを食べた分、運動するのは?」
「は? それどうなんの?」
「現状維持」
「意味ねぇだろ。てか、多分よけい太るわ」
「まあ、無理に新しいことせず。現状の意地に尽力しましょう、てことで」
「何そのまとめ方? まあ、いいやパフェ頼もう」
「……」
「……」
「……今のギャグ?」
「……いや、素」
「このデブが……」
二人は喫茶店をあとにした。