早口言葉でさ
「早口言葉で勝負しようぜ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「遅口言葉で勝負しようぜ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「……なんでもかんでも逆張ればいいってもんじゃねぇぞ」
「そうだな。反省するよ」
「するわけねぇくせによ。で、遅口言葉って何よ?」
「その前に早口言葉って何よ?」
「あーめんどくせぇ。そこからぁ?」
「……って尋ねられてお前は説明できるのか?」
「突拍子もない試練だな。えーと?」
「はい。じゃあ早口言葉勝負しましょうか」
「早い早い! シンキングタイムが刹那過ぎるだろ! あと、遅口言葉の概要が闇に葬りさられた!」
「いいんだよ。そんなもんは存在しないんだから」
「ったくよー、無駄なやり取り増やしやがって。で、勝負してくれんのね?」
「もちろん。負けた奴は、店の前で逆立ち歩きね」
「きっつ! 罰ゲームが絶妙にきつい!」
「あ、やっぱ私だけは負けたらパフェおごるで」
「ふざけんなよ。何、自分に保険かけてんだよ」
「ほう? 勝つ自信がおありでないと?」
「……上等だよ」
「ま、マジか? まああんたがいいならやるけど」
「やろうや。先行はやるよ」
「オーケー。お題は?」
「そうだな……カエルピョコピョコみょぴょっ」
「え?」
「カエルピょぴょ……」
「……」
「……」
「……パフェおごるわよ」
「……ありがと」
二人は喫茶店をあとにした。