物真似をさ
「突然だが。物真似していいか?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「突然だぐぁ、ものむぁねしていいけぁ?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「お前、頭大丈夫か?」
「突然、突拍子のないことをおっしゃりやがるお前よりは」
「いやいや、何今のねっちょりした発言は?」
「あ? お前の真似だよ」
「……右頬を差し出せ」
「左ならいいよ」
「いいのかよ。このマゾヒストが」
「おぅ、いいね。もっと頂戴、はぁはぁ」
「こいつ無敵かよ。付け入る隙がねぇな」
「あるわけねぇだろ。で、猿真似がどうしたって?」
「物真似ね。いや、最近家でよく有名人の物真似の練習しててさ」
「何してんのお前。暇過ぎだろ」
「うるせぇな。好きでやってんだよ、いいだろ別に」
「いやまあいいけど。それで?」
「だからさ、お前に見てもらって評価を頂こうかと」
「いいよ。二度とそんなふざけた真似が出来ないよう、激辛レビューを叩き付けてやるよ」
「いや、まだ何も真似してねぇんだけど。まあ、やるぞ」
「来いよ」
「えー、個性派ダンサー「マミーちゃん」の口癖の真似」
「……」
「……それ、ありけりぃ?」
「……」
「……どうすか?」
「……マミーちゃんって誰?」
「そっからかよ! やり損だわ!」
二人は喫茶店をあとにした。