グレープフルーツってさ
「グレープフルーツって、正直言って酸っぱすぎるよな?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「そうね。まるで青春ね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ああそう……酸っぱいだけなのか、お前の青春は」
「そうよ。甘酸っぱいなんて綺麗なもんじゃないわ。ただただ酸っぱいの」
「まあ、梅干しみてえなお前の青春なんざ、毛玉ほどにどうでもいいんだよ」
「おい。毛玉をバカにすんなよ」
「キレるとこそこ!? 毛玉以前に自身がバカにせれているのですが」
「私の悪口はいい、だが毛玉の悪口は許さない」
「お前は毛玉のなんなんだよ。戻すぞ、グレープフルーツだよ」
「いや私はあの酸味が美味しいと思えるからね。子ども舌のあんたとは違うから」
「いや、最初の一文だけでよくね? 後半のマウントいらねぇだろ」
「いや、この世は弱肉強食だから。常に自分以外の何かにマウントをとりながら生きないと死ぬからさ」
「何その、バーサーカーじみた価値観」
「どっちかていうと、レスラーね。マウントとるから」
「そっちのマウントかよ。まあいいや、お前とアタシの食の好みが一致しないのはよく分かったよ」
「嘘おっしゃい。そうだったら、今、こうして一緒に同じパフェ食べてないわよ」
「それは……そうだな、へへっ」
「ふふっ」
「へへっ」
「……きもっ」
「お前が始めた流れだろ!」
二人は喫茶店をあとにした。