ランプ壊れちゃってさ
「ランプがさ、壊れちゃったんだよ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「マジ? 私の心みたいに?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「そうそう。取っ手の部分が折れちゃってさ」
「おい」
「あ?」
「何、無視してんのよ。私のギャグを」
「……うーん。拾った方がいい?」
「当たり前よ。ゴミはゴミ箱へ」
「自分でゴミって言っちゃったよ! そして、その本人公認のゴミをこれから拾わなきゃならないアタシの心境やいかに!」
「頑張って」
「……えーと? そうだな」
「取っ手が壊れちゃもうダメね」
「おうおう、シンキングタイム短すぎだろ。勝手に話を戻すなよ」
「あんたが鈍いのがいけないんでしょうが。そんなんだから、私の気持ちにも気づけないのよ」
「いや、それは別に気づく必要ないけど」
「おい」
「あーもう。また話がずれてるよ」
「あんたの感覚のように?」
「やめろやめろ! もうノらんぞ」
「分かったわよ。で、新しいランプを買う為のカネを貸してくれと」
「飛躍させすぎだろ! つか、そこまでカネに困ってねぇよ」
「だったらステーキのひとつでもおごれよ!」
「急にキレるな! 更年期かよ!」
「まあ、実年齢300歳ですし」
「え? ……エルフってそういう系の種族だったのか」
「いや、嘘だけど」
「だと思ったよ。お前の嘘は、ランプの明かりより分かりやすいからな」
二人は喫茶店をあとにした。