オブジェをさ
「親戚に変なオブジェ貰ったんだけど、いる?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「変じゃなければ欲しかった」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「……うそうそ、変じゃない」
「いや、遅いって」
「くぅーっ! 失敗した! 余計な形容詞付けるんじゃなかったよ」
「押し付ける気満々じゃないのよ。あっぶねぇ」
「いやぁ、マジで邪魔なんだよあのオブジェ。何回、足ぶつけたことか」
「具体的にどういう形してんのよ?」
「うーん……なんか、螺旋状の帯みたいのに、デカい魚の鱗みたいのがいっぱいついてる」
「キモ」
「そう、キモいんだよ。だからお前にやろうかと画策していたんだが」
「残念でしたぁ。ギャッハッハ!」
「ムカつくぅ。まあ、一番ムカつくのはそんなのをよかれと思い込んでアタシによこした親戚だけど」
「まあ、悪気があるわけじゃなさそうだし、あれだね」
「あれ? 何だよ」
「売ろう」
「出た! 十八番! ……いやあれ売れないだろ。ほとんどゴミだぞ」
「いやいや。あんたにとってのゴミは、誰かにとっての宝でもあるのよ」
「おっ、何かいいこと言った感じ」
「ドヤぁ」
「口で言うなよ。まあ、一理あるな。人によって価値観は様々だしな」
「まあ、多分そんなゴミ欲しがるやついないけど」
「うぉい! どっちだよ!」
二人は喫茶店をあとにした。