忘れ物をさ
「あのさ、お前ん家にアタシの傘忘れてない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「ああ。私の日傘用のやつ?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「あの、勝手に私物にしないで頂けるかい? 忘れ物とはいえ、アタシのなんで」
「まあ、返してほしけりゃ返すわよ。なんか絶妙にガラがダサいし」
「ありがとう。なんか、若干ディスられたけど」
「いやあのガラはないでしょ。何あのドクロマークまみれのデザイン」
「いいじゃんよドクロマーク。なんかアウトローな感じがイカすだろ?」
「アウトローというか、アウトライフよね。生から離れてるからね、亡骸だからね」
「亡骸言うなよ。確かに若干、マークの密度高すぎて、集合体恐怖症泣かせな感じがあるけど」
「そうでなくても泣けてくるわよ。あんたのセンスに」
「余計なお世話だ。まあ、それなららいいや。この後 取りにいくわ」
「え? ゴミ捨て場に?」
「ゴミす……お前、捨てたのか!?」
「いやまだ、捨ててないけど」
「まだって何だよ! 何でアタシの手にわたる前に処分すんだよ!」
「よかったじゃない。紙一重で間に合って」
「ホントだよ。あぶねぇ」
「まあ、これを機にハートマークの奴とかに買い換えてみたら」
「勝手に機会を作るなよ! あと、そっちの方がナンセンスだわ!」
二人は喫茶店をあとにした。