予約した?
「来週のあれ、予約した?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、当日 買い行くつもり」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ごめん、マジで話が噛み合ってないわ。旅館だよ、旅館。来週、一緒に行く予定の」
「ああ、そっち? 来週発売のドラゴン大百科のことかと思ったわ」
「何それ? そんなのアタシは買わねぇよ」
「え!? 嘘でしょ……」
「そんな驚く? この世の終わりを知ったときみたいな顔してるけど」
「は? この世はとっくに終わってるでしょ」
「辛口! 口から火が出ちゃう! もっとポジティブに生きようぜ」
「空元気で世界は変えられないわよ」
「冷めすぎだろ。昨日の肉じゃがかよ」
「え?」
「ごめん、今のなしで」
「いや、私はありだと思うけど」
「なにその優しさ! いらねぇよ。逆に恥ずかしいわ」
「それは何より。もっと恥ずかしくしてあげようかしら?」
「お巡りさーん。お縄持ってきてー」
「し、縛りプレイ! ドン引き……」
「違うだろ! お前を縛る用だよ!」
「どっちにしろドン引きなんですけど……」
「ああもうダメだわ、話を戻そうか。予約だよ、旅館の」
「分かったわよ、しとくわよ。一人部屋でね」
「二人部屋だろ! アタシは野ざらしか!」
二人は喫茶店をあとにした。