ヒローショーをさ
「この前、広場でさ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「死体が見つかった?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「血生臭い! そんなサスペンス的な非日常な話ではない。というか広場なんてオープンなところに置いとかないだろ」
「え? あんたまさか、殺人経験者?」
「ふざけんな! んなわけないだろ。あれだよ、犯罪心理学的な観点からだよ」
「ああそう。まあどっちでもいいけど」
「いやいや、アタシはどっちでもよくないから。前科ついちゃうから」
「いやもうついてるでしょ色々と」
「初耳だな。例えば何よ」
「万引き」
「してないしてない! ちゃんと会計してますよ」
「流石、抜け目ないわね」
「抜け目というか常識だろ。というか、広場の話だよ」
「何があったのよ?」
「デカいさステージあるじゃん。あそこでヒーローショーやってたんだよ」
「怪人役?」
「違う違う! アタシは演者じゃない! 見てたの、ショーを」
「なるほどね、そして、私もいつかあの舞台の上に、と決意を新たに」
「してない! そんなサクセスストーリー的なハイライトないから」
「あっそ。で、それが何なのよ?」
「何ってお前、スゲーなぁって思ってさ。こども向けのショーとは思えないくらいアクションのクオリティが高くてな」
「なるほど、私もいつかあんなアクションを撮れる監督になりたいと」
「違う! どんだけアタシを製作者サイド志望にしたいんだよ!」
「あっそ。まあ、今度一緒に見に行きましょう」
「え? マジで?」
「ええ……舞台裏を」
「もういいわ!」
二人は喫茶店をあとにした。