どこだっけ?
「あのさ、この前行った焼き鳥屋ってどこにあるんだっけ?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「この前っていつ?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「まさかの疑問文返し! そこからかよ! 会話が進展しねぇぜ」
「いや、申し訳ないけど、そこが明確にならないと店の位置どうのこうのって話に辿り着けないから」
「この前はこの前だよ。えーと……あれ? いつだっけ?」
「いや、私に聞かれても困るわよ」
「あーヤバい、思い出せない! くっそぅ、先々週ぐらいじゃなかったか?」
「先々週は鍋、食べに行った気がするけど」
「鍋? え、それ覚えてないわ。行ったっけ?」
「行った。夢の中で」
「うん、それはアタシが知るはずがないわ」
「むしろ知ってたら怖いわよ。他人の夢を覗くとか、ド変態よ」
「その類いの変態はいささか珍しい気がするが。じゃなくて、焼き鳥屋の話だよ」
「んー、じゃあ東の海沿いあたりで」
「じゃあ、ってなんだよ。何も解決しないじゃん」
「そう言われても、覚えてないものは知りようがないわよ」
「まあ、それはそうだが。どうも引っ掛かるなぁ」
「悩んだってしょうがないでしょ。また、二人で美味しい店を探しましょ」
「んー、そうする他ねぇか」
「そうよ。では早速、このあと、東の海沿いに行きましょ!」
「なにその、東の海沿いに対する執着。まあ、別にいいけどな」
二人は喫茶店をあとにした。