幽霊ってさ
「お前、幽霊って信じるか?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「んーまあ、そいつが生前にどんな人物だったかによるわね。堅実な方なら信用に置けると思うわ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや、幽霊の存在自体の話だよ。誰も、そいつの人格なんか聞いてねぇよ」
「あ、そうなの。なんか、そいつにカネ貸して大丈夫かな、みたいな相談かと」
「話が飛躍しすぎだろ。カネせびる幽霊なんて聞いたことないぞ」
「そうね。死者よりも生者の方がよっぽどタチが悪いものよね」
「まあ、生きてる奴が一番怖いって言うしな。って、なんでこんな辛気臭い話になってんだよ」
「たまにはいいんじゃない? こんなヘビーな話題も」
「いや、だいたいいつもヘビーな気がするんだが。で、結局お前は幽霊の存在は信じるたちなのか?」
「うーん、どっちかというと……」
「どっちかというと?」
「どっちでもいい」
「何だよ! 何でその結論があるのに無駄にタメたんだよ!」
「まあ、少なくともあんたの肩にぼんやり乗ってる奴は信じるわよ」
「え? ……何、言ってんだ?」
「……」
「いや、ちょっ……嘘でしょ、えっ!」
「うん。全部嘘だけど」
「ふざけんなよ! お前が一番怖いわ!」
二人は喫茶店をあとにした。