借りパクしてね?
「あれさお前、いい加減あれ返してくんない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「ああ。ごめん、売ったわ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「は? 嘘だろ?」
「うん、嘘だけど」
「あーびっくりした。というかまだあれが何なのか言ってないんだが」
「言わずもがな分かるわよ。肩叩き棒でしょ」
「んなわけね……あるわ。普通に当てやがったな、そこはボケろよ」
「じゃあ……鰹のたたき棒」
「うん、ごめん。アタシが悪かった。今のスベりは私の落ち度だ、すまん」
「頭を上げてちょうだい。スベるのには慣れてるわ。伊達に幼少期に毎日、一人で公園の滑り台で遊んでないわよ」
「なにその悲しい過去に裏付けられた自信。泣けてくるわ」
「いや、泣きたいのはこっちだわ!」
「急よ。急に高圧的だな。情緒不安定かよ」
「私の情緒と景気は不安定なのが世の常よ」
「お前の精神状態と勝手に肩を並べられた景気に同情するよ。じゃなくて、肩叩き棒だよ」
「まあ、返せと言うなら返すわよ。何も言われなきゃ貰いっぱなしのつもりだったし」
「エルフさん、窃盗罪って知ってるかい?」
「森羅万象は私の手中にあるも同然よ」
「神だわ。お前もう神だわ。誰も敵わないわ。誰もお前を裁けないわ」
「まあ、神のおごりでパフェ頼んであげるからさ。見逃しておくれ」
「おごりと言うか、傲ってる神様だな。別にいいけど」
二人はパフェ完食後、喫茶店をあとにした。