雨がすごいな
「おいおい、マジかよ。雨降ってきたぞ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「あら、最高じゃない? 嫌なこと全て、水に流せるわ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「重い! 初っぱなから重いわ! 雨で濡れた服より重い!」
「着衣遊泳は命取りよ。気をつけなさい」
「しねぇよ! ……それより、何かあったのか?」
「ええ。聞きたい?」
「めっちゃ聞きたい」
「じゃあ、言わない」
「あーっ! 失敗したよ! こういう場合は「聞きたくない」だったわ、こいつ相手の場合!」
「まだまだ未熟ね。デビ坊」
「デビ坊って何だよ! あーくそ、もう一回チャンスをくれ!」
「1000ゴールド」
「言うと思ったよ。え? 1000? 高過ぎるだろ!」
「じゃあ、2000でいいわよ」
「何が「じゃあ」なんだよ。上がってんじゃねぇかよ。倍になってんじゃんかよ」
「じゃあ買ってくれるわね。buyだけに」
「ムカつくわー。くそみたいなシャレ言いやがってよ。足元見るのも大概にしろや」
「あっ! あんたの右の靴、ガムついてるわよ」
「リアルに足元見るなよ! ……まあ、ガムの指摘はありがとう、だけどさ」
「食うなよ、それ」
「食うわけねぇだろ! デレて損したわ!」
「まあいいじゃないの。今朝の朝食の時、間違えてスプーン噛んじゃった私よりましよ」
「嫌なことそれかよ! 地味過ぎだろ!」
二人は喫茶店をあとにした。