角どうよ?
「皆の衆、よくぞ参られた。今日、貴殿らに集まってもらったのは他でもない」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、私以外だれもいないのだけれど」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「おいおい、水をさすなよ。雰囲気だよ雰囲気。それぐらいに重要な話があるということだ」
「随分とハードルを上げなさるのね。自己責任で飛び越えなさい」
「走りながらは無理だな。せめて高跳びの要領で」
「背中の羽は使わないのね」
「いや、これ使っても大して飛べんぞ」
「ホント? じゃあその羽は何のためについているのよ?」
「飾り」
「ダサ」
「うぉい! 辛辣にも程があるコメントだな!」
「背中に羽なんて今時流行らないわよ」
「なにを世迷い事を。お前も生えてるじゃないか、そのあるのかないのか分からないくらい透明な羽が」
「あるのかないのか分からないのなら、別にあってもなくても同じでしょ」
「む? ……それはそうか」
「嘘? 信じられないわ、今ので納得するなんて」
「常識では計り知れないのが、アタシという人間さ」
「流石。計測器も煙吹いて爆発することでしょうね。というかあんたって人間なの?」
「まあ、正確には違うな。俗にいう半人前という奴だ」
「言葉の使い方間違ってる。流石、魔族」
「誉めてもアメしか出んぞ。ほい」
「ありがとう。いや、誉めてないけど」
「そうなのか?」
「そうよ。で、何よ重要な話って?」
「ん? ああ、このアタシの角……どうかなっていう話?」
「別に……素敵だと思うけど」
「お、おう。ありがとう」
二人は喫茶店をあとにした。