しりが痛いな
「すげぇよ。いてぇわ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「え? もしかしてお尻?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「なんで当てるんだ? お前、エスパーか?」
「いや、痛いといったら、普通は第一候補はお尻でしょ」
「マジで? 頭とかじゃないのか? 完全に正反対の部位だけど……」
「で、何に噛まれたの?」
「噛まれてねぇよ! さっき公園の石のベンチに座ってたから、痛くなったんだよ」
「つまらないわね。そこは犬に噛まれたとか鳥につつかれたみたいなユーモアが欲しいんだけど」
「つまらなくて悪かったな。とにかく痛くてしょうがないんだ」
「じゃああれね、パフェ頼みましょ」
「なんでぇ? 関係ないだろ! お前が食いたいだけじゃん」
「いや、尻の話なんて下品なテーマで会話を繰り広げるなら、せめてもの花としてパフェのひとつでも置いとかないと」
「なにその謎の微調整。むしろ尻の話の最中に食べ物頼む方がアレだろ」
「それはそうね。さながらシリアスシーンの最中に謎に挟まるギャグシーンみたいな。今それいる? って感じの水の指され方ね」
「急にどうした? 何か気に障る映画でも見てきたのか?」
「ちょっと、二日前にね。あっ!」
「びっくりした。何だよ?」
「尻だけに、シリアス」
「つまんね! 尻の痛みも吹き飛ぶ程の痛々しさ! 今のお前のギャグの方がいらねぇよ!」
「おかげで尻の痛みが消えたわね。一件落着」
「うるさいわ!」
二人は喫茶店をあとにした。