枯らしちゃってさ
「いやぁ、参ったな。枯らしちゃったよ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「マジか? あんたそれ、よくて島流しよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「なんでぇ? まだ何を枯らしたかも言ってないのに。しかも島流しが最低ラインとか罰重すぎない?」
「任せなさい。私が弁護してあげるから」
「犯罪者で話を進めるなよ! というかお前の弁護とか願い下げだわ。余計に罰が重くなりそう」
「まあそれはいいから。何を枯らしたのよ? 情熱?」
「さらっと話を戻すなや……え? 情熱? いやいや枯れてないから! まだまだこれからだから!」
「これからこれからって……いつ始めるのよ!」
「なんで怒られた? 何も先伸ばしにはしてねぇだろ」
「ならいいけど。善は急げよ」
「急がば回れだ。じゃなくて、枯らしてしまったんだよ。大切に育ててたチューリップをさ」
「枯らす時点で、大切にしてないと思います」
「出たよ正論! それを言っちゃおしまいでしょうよ」
「おしまいなのはチューリップの命よ」
「やめろやめろ! 余計に罪悪感強くなるわ」
「まあ、枯らしてしまったものわ仕方ないわよ。気持ちを切り替えて、明日にすすみましょう」
「他人事だと思ってからに。まあ、いつまでもへこんでいても仕方ないか」
「そうよ、チューリップは今も生きてるわ……私たちの心のなかで」
「それ、死んでる奴のアレじゃん……」
二人は喫茶店をあとにした。