毒キノコをさ
「もし、毒キノコを食べてしまったらどうする?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「来世は、億万長者がいいわね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「最速。最速で生を諦めたな」
「まあね。来世に期待しましょ」
「ドライすぎだろ。毒キノコを食った後の対象法の話なんだが」
「そもそも毒キノコを口にする状況に陥らないように努めるべきじゃないの?」
「それはそうだが。もしもだ、食べてしまったらどうするかってこと」
「そうね。別の物を食べて毒を相殺するとか」
「なんか難易度高そうなこと言い始めたな。何を食べるつもりだ?」
「毒の反対にある概念ね」
「無駄に小難しいな。反対っていうと……薬?」
「まさに毒にも薬にもならない答えね」
「うぜぇ。毒の反対はそれしかないだろ」
「毒治すのに薬を飲みましょう、じゃつまらないでしょ」
「つまらないって……そこにエンタメを求めんでいいだろ」
「エンターティナーとして納得行かないわ」
「人の死の間際にエンタメもクソもないだろ」
「ホントよ見せ物じゃないわ」
「お前だろ」
「仕方ないわね、薬でいいわよ」
「しかし、そんな都合よく薬なんて持ってるかね?」
「確かに。応急処置が必要ね」
「どうするんだ?」
「別の毒キノコを食べて相殺する」
「毒を持って毒を制す。もう来世に期待だな」
二人は喫茶店をあとにした。




