知り合いがさ
「この前知り合いがさ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「しりとしりを合わせて」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「おしりあい?」
「くっだらねぇ」
「お前のフリだろ。ふざけんな」
「お前のシリ?」
「言ってない。尻から離れろ」
「ケツ別ってやつね」
「うぜぇー。知り合いの話だってんだろ」
「あんたの知り合いなんて、片足の指で数えられる程度しかいないわよ」
「なんでわざわざ足の指で数える? 数えにくいだろ」
「知り合いが少ないことを貶したのはツッコまないのね」
「事実だからな」
「さみしす!」
「うるせぇ。知り合いの話を続けさせろ」
「どうせ身内でしょ」
「ああ、いとこがね」
「ほらやっぱり。コミュニティが小さい。器と同じく小さい」
「おい、コミュニティはともかく器を貶すな」
「ごめん」
「素直だな」
「器が大きいからね」
「だったら貶すなよ」
「で、あんたのいとこがどうしたのよ?」
「やっと話題が戻ったよ。ここまで長い道のりだったな」
「長いわね。長いといえば」
「ここまで来て話題をとるな。いとこがだよ」
「早くいえや」
「うるせぇ。私のいとこがな」
「はい」
「バンド始めたんだよ」
「……」
「……」
「……タめたわりにわな話題ね」
「お前がタめたんだろ」
二人は喫茶店をあとにした。