バンジージャンプをさ
「一度はバンジージャンプやってみたいよな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「紐無し?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ただの身投げだろ。私に死せと申すか」
「死ぬには早いわね。2年ぐらいはやい」
「少ね。誤差だろ」
「2年あったら何がしたい?」
「なぜ余命2年前提で話題をふる。バンジージャンプやってみたいってはなしだ」
「余命2年でバンジージャンプしたいのね」
「混ぜるな危険。バンジージャンプ単体だよ」
「バンジー単ってやつね」
「聞いたことねぇ。私はあのスリルを味わってみたくてな」
「バンジーをなめすぎね。バンジー組合に目をつけられるわよ」
「なんだその団体は。そんなんねぇだろ」
「この作品は実在の人物・団体どうのこうのってやつね」
「それフィクションのやつだろ。実在しねぇじゃん」
「まあ、とりあえずバンジーやる機会ができたら私も誘いなさいな」
「え? お前も一緒にやるのか?」
「いや、あんたが飛んでる様子を眺めたい」
「出たよ。趣味が悪いな」
「悪趣味ならぬ正義趣味ね」
「なんだそれ。言葉を作るな」
「言葉とは時代とともに姿を変えゆくものよ」
「知った風な口をきくな」
「バンジージャンプも数年後には別の言葉になってるわよ」
「は? どんな言葉よ」
「ヘヴンズジャンプ」
「それ紐無しだろ。お前はヘルに行ってしまえ」
二人は喫茶店をあとにした。