辛いもの好きか?
「お前、辛いものは好きか?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「好き。すき焼きね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「後半のやついらないだろ。すき焼き関係ないし」
「キムチ鍋的なサムシング」
「何それ? それもうキムチ鍋だろ。すき焼きじゃないだろ」
「気を抜いたらすき焼きじゃなくなる。隙だらけってやつね」
「すきすきうるせぇな。辛いもの好きかって話だ」
「付き合いで食べる程度ね」
「酒か? そのニュアンスだとあんまり好きそうに聞こえないけど」
「食えっていわれれば食べる。500ゴールドで」
「カネをとるのか」
「いや私が払う」
「どゆこと? もう好きなのかどうか分からなくなってきたな」
「まあものによるわね。明太子とかは無理ね」
「明太子はうまいだろ」
「明太子を白米なしで5つ食えとかはきつくない?」
「なんで勝手に縛り増やしてんだよ。普通に食えよ」
「いや白米に甘えるのはナンセンスよ」
「白米に甘えるって何? 聞いたことねぇぞ」
「明太子をリスペクトするなら白米はなしで食うべきよ」
「お前さっききつい言うてたろ。リスペクトの欠片もねぇ」
「5つはきついって話よ」
「まあ、5つは多いな」
「0.5つでいいわね」
「すくね。お前は明太子ふりかけでもかけてろ」
二人は喫茶店をあとにした。