百獣の王にさ
「百獣の王になりたくね?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「王をなめるな」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「圧が強め。お前は王のなんなのだ?」
「ダチ」
「フランクすぎる。もっと王を敬えよ」
「王が唯一、素の自分で話せる相手ってことよ」
「なんの設定だ。お前なんかをダチ認定する奴が王になれるかよ」
「じゃああんたも王になれないわね」
「うわっ! ……めっちゃ点と点とがつながったな。複線回収でしょ」
「三日程は話題になれそうね」
「短いな。コンテンツの消費速度が早すぎるだろ」
「当たり前よ。コンテンツは鮮度が命よ」
「知ったようなことを言うでないぞ」
「お。今の王っぽかったわね」
「マジ? どの辺がよ」
「語尾が」
「何それ? 語尾にぞをつければいいみたいな言い方だな」
「そうだぞ」
「お前がつけるのかよ。お前王か?」
「王のなかの王ぞ」
「うぜー。こんな王は秒で革命起こされるだろ」
「栄枯盛衰ね」
「何も栄えてないだろ」
「さかえちゃんね」
「さかえちゃん? なんだそれは、説明してくれ」
「特に意味はないわよ」
「出たよ。無意識オブ無意味」
「まあ、あんたが王になることも無意味ってことよ」
「どんな締めだよ」
二人は喫茶店をあとにした。