列車にさ
「この前、列車に乗ったんだけど」
角のとがったデビルの少女が言った。
「私もつれてけよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや、もう過去のことだから。過去形で話してるから」
「過去にとらわれてるってわけね」
「お前だろ。過ぎたことにケチをつけるな」
「私に説教とは、いい度胸ね」
「説教するやつは嫌われるんだぞ」
「あんたみたいにね」
「ほんとだよ。気は済んだか?」
「参りました。列車の話していいわよ」
「まったく手間のかかる奴だ。いやーもう綺麗だったね、窓からの景色が」
「どんな感じで?」
「うーん……もう緑がすごかったね」
「えんどう豆」
「いや関係ないね。緑だけども」
「えんどう豆ぐらい緑がすごかったと」
「まあそうだけど、その表現だとえんどう豆がノイズすぎない?」
「じゃあ、ほかの緑のものなんかないの」
「緑かー……メロン」
「パン」
「メロンパン!? 緑じゃないだろ。勝手にパンにするなよ」
「そうね。勝手にパンにされるメロンの気持ちを考えてなかったわ」
「いやそこはどうでもいいけど」
「ほかに列車の思い出ないの? なんか食べたとか」
「ああ食べたよ、窓からの景色見ながらね」
「何を食べたの?」
「メロンパン」
「メロンパン食ってんじゃねぇか」
二人は喫茶店をあとにした。