翼が生えたらさ
「デカい翼が生えたら何したい?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「翼を枕にして昼寝」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「うーん一理ある」
「一理あるわね」
「お前が言ったんだろ。いや、なんかもっとやりたいことあるだろ」
「どこがに飛んで行くとか?」
「そうそう。どこ行きたい?」
「昨日」
「むかつく。行けるわけねぇだろ」
「過去には戻れないわよね」
「分かってんじゃねぇか。場所を言えよ」
「じゃあ、あんたん家」
「はぁ? なんでよ」
「別に翼がなくても行けるでしょ」
「お前が言ったんだろ。自己完結すな、私の存在意義なくなるだろ」
「じゃああれね、あなたの存在意義を探す旅に出るとか」
「何で存在意義がないこと前提なんだ。まあ、空の旅はいいかもな」
「旅は大地を踏み締めてこそでしょ。空を行くのはナンセンスね」
「なんでじゃ。翼があるのに歩いてどうする」
「翼があるけど、あえて飛ばないスタイル」
「尖りすぎだろ。翼のメリットが皆無だわ」
「翼はまあ、飾り扱いってことで。見た目補助的な」
「逆に翼が重い分、歩きにくいのでわ?」
「大丈夫。普段は取り外して携帯しとくから」
「じゃあもう生えてないじゃん」
二人は喫茶店をあとにした。