左肩がさ
「なんか最近、左肩が痛くてさ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「あたしゃ医者か?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや違うだろ。そんな高学歴じゃないだろ」
「そうね」
「納得した!? ……じゃなくて、誰も本格的な治療法は訪ねとらんよ」
「いや治した方がいいでしょ、早めに」
「そりゃそうだが、なんかいい方法あるのか?」
「そうね。右肩も痛めるとか?」
「なんで? わざわざ右も痛めてどうすんだ?」
「両方痛ければバランスいいでしょ」
「関係ないだろ。余計に体悪くして意味ねーよ」
「あとはそうね……左脚も痛めるとか?」
「なんで他のとこ痛める前提なんだよ」
「左側だけ痛ければアシンメトリーじゃん」
「だから関係ねーだろ。左肩を治させろよ」
「治すと言ったら……薬ね」
「薬? どんな薬よ」
「つば。つばつけとく」
「おばあちゃんかよ。治す気ないでしょ」
「コスパいいでしょ」
「よくねーだろ。パーフォマンス0じゃん。なんならつば塗られてマイナスだわ」
「あとはそうね……」
「もういいよ。大人しく病院行くよ」
「いや行かないで」
「え? なんでよ?」
「この大喜利気に入ったわ」
「いや、もう治させてくれ」
二人は喫茶店をあとにした。