体操をさ
「最近、朝起きたら体操してんだよね」
角のとがったデビルの少女が言った。
「で、終わったら明日の朝まで寝ると」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「体力よ。体力が無さすぎだろ」
「いくらなんでも寝すぎね」
「寝すぎつーか、もはや睡眠がメインだし。あたしの1日のスケジュール、シンプルすぎるだろ」
「無駄のない無駄な1日ね」
「ホントだよ。そんなわけないだろ」
「じゃあ体操したあと何するの」
「朝飯を食う」
「体操しながら?」
「マルチタスク。めっちゃ気持ち悪くなりそうなマルチタスク」
「どっちかに集中したのうがよさそうね」
「いや朝飯に集中させろよ。体操はさっきやっただろ」
「もう1体操してから朝飯でもいいんじゃない?」
「ああ? ……まあその方が健康的かもな」
「決まりね。体操したのち体操して……」
「朝飯だな」
「いや体操」
「いやいいよ。朝飯食わせろよ」
「もう1体操してから朝飯でもいいんじゃない?」
「いやしただろもう1体操。一生朝飯食えんぞ」
「なんかもうここまで来たら朝飯よくない? 昼飯食えばいいじゃん」
「なんでだよ。朝飯食わせろよ、元気でないだろ」
「元気ね。体を動かすと元気出るわよ」
「いやもうたぶん元気ないでしょ。動く元気ないよ、さっきから体操しかしてないから」
「元気ないなら……寝るしかないわね」
「結局同じスケジュール」
二人は喫茶店をあとにした。