メモしときゃよかった
「あーあれメモっときゃよかった」
角のとがったデビルの少女が言った。
「何? あんたの名前?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「あたしゃ記憶喪失か何か?」
「ここはどこ? 私は誰? 地球が何回回った?」
「最後いらんだろ。小学生のレスバか?」
「自分の名前忘れるとか。デビルも末ね」
「何それ? 意味わからんが、とりあえず貶されてるのは伝わる」
「じゃあグッドコミュニケーションね」
「どこがだ。つーか自分の名前じゃねぇよ」
「じゃあ答えてみなさい」
「それは……作品の都合上さ」
「メタい。気の効かない奴ね」
「ええ!? ……じゃあお前だったらどう答えるんだ」
「ああああ」
「勇者じゃん。早く物語始めたくてしかたない勇者が付けるやつじゃん」
「勇者エルフ」
「何そのエルフのバリエーションみたいなやつ……」
「種類を増やして、グッズ化で商品展開できそうね」
「誰も買わねぇだろ。資源の無駄遣いだ」
「私が買うから大丈夫」
「大丈夫じゃない。主にお前の頭が」
「あんたも買いなさいよ」
「やだよ。使い道がないだろ」
「エルフのメモ張……とかだったら」
「それはいるわ」
「エルフのアクリルスタンド5個購入でプレゼントよ」
「普通のメモ張買うわ」
二人は喫茶店をあとにした。