砂漠にさ
「もし砂漠で遭難したら、どうする?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「心のオアシスを探す」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「心? いらなくね? オアシスでいいだろ」
「そうね。心いらないわね」
「素直。どんな言い間違えだ」
「私ってほら、詩人だから」
「関係ないだろ。全国の詩人に失礼だ」
「失礼しました〜ん」
「詩人オールスターズにボコられてしまえ」
「詩人は拳でなく言葉で語るのよ」
「じゃあもう普通じゃん。一般的だろ」
「でも詩人すべてが言葉で語るとは限らないわよ」
「まあ、なかには気性の荒い奴もいるだろ」
「私がそれね」
「こわっ! ひと悶着起こす気か」
「ひと悶着じゃ足りないわね。ふた悶着、いえみつ悶着は起こしてやるわ」
「もんちゃくもんちゃくうるせぇ奴だな。穏便に頼むよ」
「それよりオアシスの話は?」
「てめぇでズラしといてなんだその態度。まあ、水の確保は重要だな」
「水といえば。この前、水餃子食べたんだけど」
「もうズレた! ……一応聞こうか」
「いやそれだけ」
「意味! その話題差し込む意味なかっただろ」
「意味のないことが意味があるのよ」
「でたよ、エセ詩人要素。オアシスで溺れてしまえ」
「いや詩人オールスターズが助けてくれるわ」
「オールスターズも遭難中かよ」
二人は喫茶店をあとにした。