南の島でさ
「南の島で、釣りして過ごしたいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「釣りで生計立てるのをナめすぎでしょ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
「確かに、軽率な発言だったな。すまん」
「気を付けなさいな」
「なんでや。現実的すぎるだろ」
「じゃ空想の話かしら」
「空想ではないが、もうちょっとこう……メルヘンチックなね」
「オーケー」
「物分かりがいいな。話を続けるぞ」
「どうぞ」
「なんかヤシの木の木陰に座ったりしてさ、のんびり釣りして過ごしたいのよ」
「のんびりは無理じゃない? あんたせっかちじゃん?」
「そんなことないだろ、のんびりしようと思えばできるわ」
「だってもうあれでしょ、せっかちすぎて明日の朝食を前日に食べるくらいでしょ」
「せっかちすぎだろ。もう夕食じゃん、意味ねーよ」
「で、朝食に昼食分を食べる」
「普通だな。もう普通の食生活だろ」
「健康的でなによりね」
「せっかち関係ないだろ……お前は南の島とか興味ないのか?」
「めちゃくちゃあるわよ」
「めちゃくちゃあるのかよ。その割にはな反応だったけど」
「例えば……釣りとかして過ごしたいわね」
「アタシのやつ。数秒前に言ってたかやつ、パクるなよ」
「いや、私は船で海に出て釣るから。あんたと違ってアクティブだから」
「でたよ謎マウント。空想の話でマウントとってどうすんだよ」
「空想ね……果たしてこの二枚のチケットを見ても同じことが言えるかしら?」
「は? お前そのチケットはまさか!」
「北の国、ワカサギ釣りツアー」
「キレイに逆! ……まあ行くけど」
「ありがと」
二人は喫茶店をあとにした。