相撲をさ
「アタシ、子どものころ相撲強くてさ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「大人ぶるな。今も精神は子どもだろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「初手精神攻撃。いつも通りだな」
「慣れたものね」
「慣れてたまるか。いつも精神狙われてるんじゃ病むぞ」
「もう病んでんでしょ。色々と」
「だから攻撃するなよ。アタシのソフトなメンタルじゃ耐えきれん」
「ソフトクリーム食べたいわね」
「うるせぇ。相撲の話だよ。子どものころに町内の子ども相撲大会で優勝したんだよ」
「なんかすごい地味な過去の栄光ね」
「地味じゃないだろ。優勝だぜ優勝」
「いわゆる、井の中の蛙、大会を知らずね」
「大海だろ。なにその子どものテストのケアレスミスみたいなの」
「蛙については否定しないのね」
「否定するよ。変なケアレスミスでカモフラージュしてもダメだ」
「ケアレ・スミス」
「えっ? 何?」
「いやなんでもない」
「意味不明なのぶっこまんでくれ。混乱するわ」
「デビルは混乱して自らを攻撃した」
「状態異常にさすなや。とにかく優勝はすごいだろ、なかなかできるもんじゃないぞ」
「そうかしら? その大会に私が出てたら蹴散らしてるわ」
「後の祭りだろ。参加しなかった時点で負けだ」
「んー釈然としないわね。今ここでケリつけましょうか」
「は? 今、相撲しろってか」
「いや、指相撲で」
「地味。勝っても嬉しくないだろ」
二人は喫茶店をあとにした。