巨大化してぇ
「巨大化したい願望とかない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、スペースとるじゃんそれ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「ミニマリスト。真のミニマリストだな」
「真のミニマリスト同士の決闘は命を落とすわよ」
「なんの作品? ミニマリストが何で競い会うんだよ?」
「どれだけ狭い部屋に住めるか」
「勝手にやっててくれ。あたしには窮屈で敵わん」
「確かにこの星は窮屈すぎるわね」
「何キャラだよ。宇宙人?」
「そう、スペースだけに」
「つまんねぇ! 宇宙に吹っ飛ばすぞ」
「やった。他の人類より先に宇宙移住ね」
「そのまま帰ってくるな」
「連れないわね。あんたも道連れよ」
「やめろ。宇宙なんて何もないだろ。退屈だ」
「ロマンがあるじゃない」
「ロマンで腹は膨れんぞ。美味い宇宙食があればべつだがな」
「じゃあれね、宇宙たこ焼き」
「は? なぜにたこ焼きなのだ」
「火星人の肉を具にした一品よ」
「火星人の人権が行方不明。つーか火星人はタコ型の姿とは分からないだろ」
「そうね。イカ型かもしれないし」
「対して変わらん。手足が二本増えただけだろ」
「いや、二本の差はでかいでしょ。武器を二本多く装備できるわ」
「なぜタコ型とイカ型で争わさせようとしているのだ。同じ火星人だろ、仲良くさせろよ」
「そうね宇宙に広がる絆の輪。大きな夢ね……まさに巨大な」
「無理に巨大に結びつけんでいいわ。つーか巨大化願望の話は?」
「ま、そんな日もあるでしょ」
「だいたいそんな日ばっかなんだが……」
二人は喫茶店をあとにした。