なんかうまい店ない?
「なんか、うまい店知らない? うまいもん食いてぇ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「デビルは建造物を食うのか、ゴクリ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「何その前時代的なボケは。ツッコミづらいんだが」
「温故知新ってやつね、ゴクリ」
「何を偉そうに。あと固唾を飲むな、語尾みたいになってるから」
「わかったゴクリ」
「寄せて来た! いくらなんでもその語尾は斬新過ぎるだろ」
「温故知新した結果がこれよ、クソが」
「温故知新出来てないだろ。それよりもうまい店……うまい料理が食える店は知らないか?」
「わざわざ捕捉をどうも。知らないこともないわよ」
「マジか! 教えてくれ」
「いいだろう。ただし……私を倒せたらな!」
「何その、イベント戦闘の強引な導入的なのは」
「よくあるわよね」
「あるけど。もうちょっと平和的にならないもんかね」
「人は皆、修羅よ」
「重いだろ。そんな作風じゃないんだが」
「月刊誌に移籍したら作風が変わっちゃったみたいね」
「誰も幸せにならないやつじゃん。編集部の思うツボだろ」
「幸せと言えば、うまい料理よね」
「強引に話題を戻した! ありがたいけども」
「いくつか候補はあるけど、何系が食べたい?」
「マジで? そんなに知ってんのか。じゃあ、チャーハン」
「オーケー。じゃあこのあとウチによりましょ」
「お前の手料理かよ」
二人は喫茶店をあとにした。